”不実な美女か貞淑な醜女か”という米原万里の著作がある。ロシア語通訳の彼女はこの本の中で、原発言から意味の上で少し離れるが日本語として美しい、通りがいい訳を不実な美女、原発言に忠実だが日本語として稚拙、不自然な訳を貞淑な醜女と呼んでいる。ディズニーに於いても同じことが言える。ただ、ことディズニーにおいては不実な美女の方が良いと思えることが多い。しかし、誤解を生む表現や誤訳は許されない。
ライオン・キングの”準備をしておけ”の歌の冒頭、
ハイエナの知恵など まるでイボイノシシだ
この例えはどうだろう?知恵という抽象的なものをイボイノシシという極めて具体的な物に例えるのは、次元の混乱が起きてるのでは?
ポカホンタスでは、、、。
貴女の為に嘘をつくのはもう止めにしたの。(ナコマの台詞〜ポカホンタス〜)
初めて聞いたとき、私は”嘘をつくのは貴女の為にならないからやめるの”と解釈したが、フランス語版を聞いて初めて”貴女の為に嘘をつかなきゃいけないのはもう嫌なの”という意味だと分かった(私の頭が悪いだけ?)。
また、
How high does the sycamore grow?
If you cut it down, then you'll never know
すずかげの木はどこまで伸びるの?
切り倒せばそれも分からない(”カラー・オブ・ザ・ウィンド”〜ポカホンタス〜 対訳、古田由紀子)
が原詞だが、湯川の日本語訳詞は
あぁ あの木の高さ
もし切ればわからない(”カラー・オブ・ザ・ウィンド”〜ポカホンタス〜)
これでは「木を切ったって高さははかれるでしょ」と突っ込める。
脚本翻訳家さんには聞いて誤解のない、明瞭な訳を心掛けて欲しいもので有る。